エドガー・H・シャインのキャリア・アンカー
いくつか書きたいと思います。
一番自分自身にフィットすると感じた理論です。
転職もすでに数回重ねており、自分に合う職場は何なのか・・・
と、もがく毎日でした。
まずは「キャリア・アンカー」と「組織の3次元モデル」
キャリア・アンカーとは
キャリア・アンカーとは個人が選択を迫られた際に最も犠牲にしたくない価値観、欲求、能力のこと(船を係留する錨に例えられる)
キャリア・アンカーは8つあります。
- 専門・職能別コンピタンス
- 全般管理コンピタンス
- 自律・独立
- 保障・安全
- 起業家的創造性
- 奉仕・社会貢献
- 純粋な挑戦
- 生活様式
就職、転職、仕事の転機に遭遇した時、キャリア・アンカーに立ち返ることで、
進むべき方向を決断する助けになります。
船が錨で係留され流されないように、キャリア・アンカーは自分の変わらない
特性なのです。
やや内容が難しいですが、専門書も出ています。
キャリア・アンカー―自分のほんとうの価値を発見しよう (Career Anchors and Career Survival)
- 作者:エドガー・H. シャイン
- 出版社/メーカー: 白桃書房
- 発売日: 2003/06/01
- メディア: 単行本
この本の巻末にある質問に回答することで、自身のキャリア・アンカーを知ることができます。私もやってみましたが、結果は後ほど。
キャリア・アンカーについてシャインは以下のように語っています。
キャリア・アンカーがはっきりしない場合
経験が少なくキャリア・アンカーがはっきりしない場合は、選択しようと考えている仕事について想像してみて、自分がその状況に置かれた時にどう対応するか検討してみる。
例1)飲食店の従業員として働く場合、お客さんと絶えずコミュニケーションを取っている場面と、厨房で素早く料理を作り、奇麗に盛り付けを行わなければならない場面を想像し、どちらが向いていそうかを検討してみる。
例2)マネジメント職の経験が無い場合、その職に就き、プロジェクトを自ら立ち上げ運営している場面を想像してみる。メンバーへ指示し、スケジュールを管理する立場として働く自分は適性があるかどうかを検討する。
または、その仕事に就いている人に聞いてみて、どんな状況かを検討し、自分が務める場面を想像してみるという方法もあります。
個人と組織はどうあるべきか
結論としてシャインは、個人の欲求と組織の要望をマッチングすることが最も大事であり、その責任は個人だけでなく、雇用する組織、大学や公的機関などがそれぞれ分かち合うべきだと語っています。
個人は自らの洞察を深め、まずはキャリア・アンカーを浮かび上がらせる。それを組織のマネージャーへ共有するこ。
組織が何かを用意し、ひとりひとりに有効なキャリアを歩ませてくれるだろうと期待してはいけない、組織任せではいけないと説いています。
組織がすべき3つのこと
しかしながら、個人と組織がよりよい関係となるには、組織にもすべき事があると説いています。
- より柔軟性のあるキャリアパスと、報酬、インセンティブ制度。多様な個人の欲求に対応するため。
- 経営者自身も自己を洞察し、キャリア・アンカーを把握すること。それにより部下に手本を示すことができる。
- 組織は個人に対して、組織が要望することを明確に示す事。
最後に、私のキャリア・アンカー上位3は、
- 自律・独立 7.6点
- 専門・職能別コンピタンス 5.2点
- 起業家的創造性 4.8点
最下位は保障・安定で1.6点。
安定よりも、専門性を身につけ自身の裁量で仕事をしたいという考えが強い
自覚はあるので、自律・独立が飛びぬけている結果は納得できました。
組織の3次元モデル
組織内の移動を3つの軸で説明した考え方。
シャインは「3次元モデル」と名付けました。
第一次元「機能の軸」:組織の機能間の境界線を移動するプロセス。製造→販売→マーケティングというような、業務の横移動を表す。
第二次元「地位の軸」:一般社員→主任→係長というような、縦の昇進を指す。
第三次元「中心性の軸」:同一業務や地位であっても、より組織にとって重要な業務に関わる過程。会社の中枢に寄っていくイメージ。
例えば、20代、30代は「機能の軸」で移動し、様々な知識や経験を身につけることが
よいでしょう。
ある程度の年齢になれば、「地位の軸」を意識することも必要です。
「中心性の軸」は、会社に対して、影響力を高めていくのか、それとも専門性を高めていくのか、自分が持つ「機能」と「地位」により2つの方向が見えてきます。
組織内キャリア形成において、どの年齢の時にどの部署にいたいのか、どのポジションにいたいのかを考える際に役立ちます。
まとめ~どのように理論を使うのか
シャインといえば、なんといっても、キャリア・アンカー。
転職支援の実務では使いやすい理論です。
結局、人間は自分が大事にしている何かを犠牲にするから、ストレスが溜まります。
では、その何かを見える化して、それを活かせる働き方をしましょう、
というのが理論の使いどころ。
組織の三次元モデルも、図にするととてもわかりやすく腹落ちします。
今の仕事に不満を感じている場合、組織の三次元モデルを示しながら、
転職せずに解決できる道筋を示せるかもしれません。
また、組織のどの段階からどの段階までの移動がボトルネックなのかが、
探しやすくなると思います。
個人的に思うこととして、「キャリア・アンカー」という響きが印象に残りやすいのもよいと思います。
ただ、8つのアンカーについてはやや専門的用語っぽい響きですので、そのまま使うのではなく、わかりやすくアレンジしてみるのもよいのではと思います。
実際に転職支援の実務をしていて使える場面は、求職者が20~30代の若い方で、
初めてから3度目くらいまでの転職回数。複数の希望条件を抱えていて、何を優先してよいか悩んでいる方。
ただ、接していて思うのは、若いがゆえに本来大事にしたいアンカーに従い行動が起こせず、転職を繰り返してしまうケースもあります。それでも40代くらいで気づいて行動が起こせれば、それまでの経験が却って活きてくるケースもあります。
キャリア・アンカーを明確にし、それに心から従い決断、行動すれば、
年齢的にいつでも遅いということはない。
最後は前向きな言葉で締めたいと思います。
さあ、今日も明るく笑顔でいきましょう!
※この記事は過去記事をリライトしました※