松井秀喜は、チームの勝利を第一に考えていた選手だ。
テレビで観た濱田岳との対談では、
個人の成績を第一に考えるチームメイトがいた場合、
「はっきりいって迷惑」とまで言い切っていた。
日本人的と言ってしまうといかにも乱暴ではあるが、
「個より組織」を重んじる言葉は、
我々日本人にとって違和感なく受けとめることができる
のではないだろうか。
ケンタッキーのドライブスルーを利用した。
わりと大きめの道路の路面店だったが、ドライブスルーの
レーンに入る手前から、混んでいるのがわかる状況。
考える事は皆、同じだ。
自粛が「半ば強制」されるなか、
せめて美味しいものをテイクアウトして
コロナで蓄積したうっぷんを晴らしたい。
私もそうだ。
レーンに入り、マイクに向かって注文。
車の進みはカタツムリなみだが、
受け渡しのカウンターまであと一台。
前の車はチキンを受け取るやいなや、急アクセルで発進。
待たされた反動からか、それとも、チキンを待っている家族を
一刻も早く救うためか。
コロナのストレスは、今やそれほどのものだ。
私の車の番が来た。
レジを打っているのは、大学生くらいの女性。
ちょっと活舌がイマイチで金額が聞き取りにくいが、
一生懸命な感じが伝わってくる店員さんだ。
その後ろの店員さんも目に入る。
3名が慌ただしく、動く。
チキンを箱に詰めたり、
ハンバーガーを手早く包んだり、
皆、恐らく二十代ではないだろうか。
新型コロナの感染が懸念されるなか、
彼らは注文をさばくために必死に働いている。
レジのある場所は畳3~4枚の広さ。
厨房と一体になっている。
万一、本当に万一だが、
同じスペースに感染者がいた場合、
リスクは相当高いことが予想される。
学費のため、生活のために働いている人もいるだろう。
が、このご時世である。
コロナが落ち着くまで、
リスクの高いアルバイトは辞めてもよいのではないか。
ふと思う、彼らはなぜそこまでして働いているのか。
働くとは、目の前のことに没頭すること。
しのごの言わず、与えられた仕事をこなす。
仲間が働いているから、自分も働く。
このさなか、ケンタッキーの狭い厨房で働く姿からは、
そう感じられた。
キャリアコンサルタントの使命は、その人の自己実現のため、
主体的なキャリアを歩めるために支援することである。
しかし、私が店員の輪の中にいたら、
「理屈はいいから、今はそのチキンを早く包んでください」
と言われているだろう。
松井秀喜のレギュラーシーズンでの成績は、
イチローより見劣りする。
しかし、ワールドシリーズMVPという快挙は、
毎年トップレベルの成績を
維持してきたイチローと比較しても、
遜色ない記憶を私たちに刻み込んでくれている。
仲間と共に、目の前のことをコツコツやる。
ワールドシリーズMVPは、
そんな人へのご褒美として待っているのかもしれない。
チキンを受け取るときの、店員さんの笑顔。
感染症に世界中が脅かされている事実を、一瞬忘れさせてくれた。
明日からまた、テレワークの日々。
比較的安全な場所で仕事ができる幸運を感じながら、
やるべきことをやっていこう。
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