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【売上を、減らそう/「佰食屋」】業績至上主義へ一石を投じた女性起業家の物語※書評です※

こんにちは。

 

以前ガイアの夜明けの特集を目にし、気になっていたお店「佰食屋」。

創業者である中村朱美さんの著書を読了。

 

 

根底に貫かれているのは、既存企業の拡大主義、利益至上主義へのアンチテーゼですが、これからの世の中には合っている、合理的な部分が多々あります(詳細は後ほど書きます)。

 

何のために目標を追っているのかわからなくなっていたり、一方的に落とされた目標を追う毎日に疑問を感じている方には、是非読んでいただきたい本です。

 

※本文から引用※

つまり、どれだけ儲かったとしても、「これ以上は売らない」「これ以上は働かない」。あらかじめ決めた業務量を、時間内でしっかりこなし、最大限の成果を挙げる。そして残りの時間(人生)を自分の好きなように使う、ということ。

 

目次です⇊

 

ビジネスモデルのまとめ

 

  • 一日100食しか販売しない、ランチ営業のみのお店
  • メニューは3種類のみ。看板メニューは国産牛を使ったステーキ丼
  • 良い食材を使い、商品力には徹底してこだわる
  • 100食販売したら終了なので残業無し
  • 有給休暇はほぼ100%消化。飲食店なのに長期連休も取れる
  • 採用はハローワークのみ。できる人材は求めない
  • FLコストは約80%。店舗の賃料を抑えたり、広告費をかけない、食材ロスを出さないことで利益を出す
  • 拡大至上主義は取らない

 

何が新しいのか

 

このビジネスモデルが新しくて、肝になっている部分は、

自分の報酬と働き方に対して、やらされること(義務)が明確であることです。

 

既存の考え方は、まず企業の目標が定められます。更にその目標を上回ることができるのであれば、当然それ以上稼ぐことを目指します。

 

しかし、そこで働く従業員の報酬はあまり変わらないのが実情ではないでしょうか。

 

昇給や賞与で報いることはあるものの、雀の涙のような金額であったり、それらの金額設定が不明瞭であったり。

 

 ※本文から引用※

不況にあえぐ経営者、形だけの働き方改革に戸惑う従業員。どちらの大変さもわかります。でも、このような状況をつくり上げてきたのは、ほかでもないわたしたち自身の働き方であり、その働き方を強いてきた経営者の責任です。つまりは、終わりなき「業績至上主義」がもたらした結果。だから、単純に思うのです。みんなが、売上を追いかけてうまくいっていないのなら、もうそれを追いかける必要なんてないんじゃないかって。

 

設備投資は還元されない

また、企業は内部留保や株主への還元を優先します。設備投資をしても、その設備投資から得られた利益が還元されるのは何年も後のこと。

 

今働いている人たちが稼いだ利益で設備投資しているのに、今働いている人達へは還元されない。これっておかしくない?と中村氏は問うています。

 

これ、そういわれればそうだ。設備投資と聞くと「資金を有効に回しているな」との印象を社員に与えますが、意外と 気がつかなかった。今いる俺たちに還元してくれ・・・!

 

佰食屋は引き算の考え方

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佰食屋はここまでしか売りません、売れば仕事終わりです、というのが明確で、

その売り上げから必要経費を差し引き、各従業員の報酬が設定されているので、引き算の考え方。

 

全員が同じ着地点を見ているので、働く人達とのミスマッチが起こらない。

むしろ仕事を早く終わらせて帰るぞ、というモチベーションにつながる。

 

もう、頑張れない

 

そして、飲食店を含むサービス業や、製造業などの伝統産業で働く人たちは、「頑張っても、もうあまり伸びない」ことをうすうす知っています。

 

しかし、企業は成長することが至上命題であると考える経営者は、毎年、前年比〇〇%!!みたいな目標を一方的に落としてきます。

 

中村氏はそこに対しては厳しい目を向けており、日本の労働者は既に「頑張っている」し、そもそも「就業時間内に利益の出せない商品やサービスがダメじゃないか」と喝破しています。

 

父親がホテルレストランのシェフで、帰ってくるのは夜遅くが当たり前の生活だったそうなので、その父親の姿を見ていた原体験もあるようです。

 

会社に頼らない。起点は「自分」

 

会社に頼る、会社にぶら下がることで幸せにはなれないことを暗示しています。

例えば、昨今の「副業解禁」にもつながる話です。

 

会社からは明確にやってほしいこと(義務)を明示し、それに見合った給与や働き方を提示する。

 

その給与で足りなければ、余った時間で副業をし給与を補填すればいい。

時間を大事にしたい方は、自分のことや家族のことに時間を使えばよい。

 

経済の拡大が前提となっていた時代、大企業に乗っかっていれば何とかなる時代は終わっています。

 

これからは「自分起点」で、どの仕事にどれだけ時間を使うか、自分のリソースをどれだけ提供するかを選択しないといけない。

 

そういった意味で佰食屋の働き方は、経営側、労働者側双方にとりウインウインの形態であるといえます。

 

3つの疑問に思っていたこと

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全てがうまくいっているのだろうか・・・と疑問に思う事もありました。

その疑問について、本の中で明らかになった内容を書きます。

 

一つ目は、給与のベースアップができるのかということ。

 

毎日同じ売り上げで拡大をしないのであれば、理論上給与は上がってゆかない。

むしろ、売り上げMAXが自分の給与が保証される条件なので、下がる危険性の方が高い。

 

そこは、店舗を増やしたり、ジェイアール京都伊勢丹でのお弁当販売など、

販路を増やすことで全体のパイを増やし、ベースアップにつなげているそうです。

 

また、販路拡大とともにエリアマネージャーなど新たな役職ができ、

職責に対する給与アップも行っているとのこと。

 

ポイントは、個店の売上拡大を図ることでなく、一つ一つのサイズはそのままで

数を増やしていること。

 

店舗を増やす基準も事業成長ありきではなく、従業員の成長があって、そのポテンシャルが一つの店に収まりきりなくなったタイミングで出店していること。

 

二つ目は、毎日が同じメニューを同じ数売るだけの仕事。これ、飽きないか?という疑問。

 

その答えとして、まず「やる気の溢れている人」は採用しない方針を取っている。

 

※本文から引用※

面接では、一人につき1時間くらいかけて、どんなふうに働きたいのか、どんな暮らしをしたいのか、じっくりと話を聞きます。そしてその人が「なるべくたくさん働いて、たくさん稼ぎたい」と考えているのなら、「きっとうちの会社では物足りないと思う」と率直に話します。「100食限定」と決めているのに、「もっと売りませんか?」というそのアイデアで、いまいる従業員たちを困らせたくないのです。

 

「やる気の溢れている人」は季節メニューの提案だったり、もっと売上の上がる内容を提案します。

 

今の佰食屋にそういう人は必要ではなく、決められたことを丁寧にコツコツやってくれそうな人、今のスタッフと合いそうな人を採用基準にしているとか。

 

実際に働いている人は、面接で履歴書を忘れ、目も合わせられない内気な人であったり、聴力に不自由がある人だったり、シングルマザーで時間に制限がある人だったり、70歳以上のおばあちゃん(3名おり、おばあちゃんズと命名されている)であったり。

 

中村氏曰く「マイノリティ」の方々が多く、逆説的にそれがダイバーシティにもつながっている。

 

興味深いのは、「毎日100食を売り切ること」に集中すると、頭が空っぽになり、他のことを考える余裕ができる。

 

それが、例えばお客さんが過ごしやすくなるちょっとしたアイディアの発案につながったりするそう。

 

この辺は、既存の常識で働くビジネスパーソンにとって、うなづけるところではないか。

 

「本当はこんなことを提案したい」と思っていても、いえば自分の仕事が増えるだけ。それで給料は変わらない。そんなことを懸念して、言いたいことを抑えている人も多いのでは。

 

三つ目は、ビジネスモデル自体が「毎日100食を売り切ること」を前提としているので、そこを達成すること自体が難しいのではという疑問。

 

そこについて中村氏は、「圧倒的な商品力」が必要と説いています。佰食屋の国産牛ステーキ丼の原価率は約50%。一般的な飲食店では、原価+人件費の合計で50~55%。

 

本の中では素材へのこだわり等も書かれていますが、このステーキ丼のように、大手が真似しずらく、一日50食から100食が必ず完売する商品を開発し続けるのは、なかなか大変だと思います。

 

現在、1日100食ではなく、50食を売り切ることを前提とした「佰食屋1/2」という店舗も出し、このモデルでFC化も計画しているようです。

 

しかし、カレー専門店で始まったこのお店も、公式インスタによると3月5日よリニューアル。

 

牛肉主体のメニューへ変わることがリリースされています。試行錯誤されているあとが見受けられます。

https://www.instagram.com/hyakushokuya_half/

 

最低でも1,000円以上の単価で、且つ大手チェーンなどとバッティングしないオリジナリティがあり、訴求力のある商品を生み出せるかどうかが、佰食屋のビジネスモデルが永続的に成り立つものかどうかのカギになるかと思います。

 

超余談ですが、個人的には「焼きそば」に可能性を感じています。(ただ自分が好きなだけです)

 

まとめ

 

全体的な感想をまとめます。

 

パートナーの存在

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全編を通してうっすらとではあるが、根底に大きな存在感が感じられるのが、中村氏の旦那さんの存在。

 

元をただせば、看板メニューの国産牛ステーキ丼は、自宅で旦那さんがつくったものが最初。

 

それに感動した中村氏が、「定年後にお店を出せればよいな~」と考えていた旦那さんを「今でしょ!」と林先生ばりに強烈に焚き付けたことが、開店のきっかけ。

 

災害があっても、支えがあった

 

そして、旦那さんは不動産業を営んでいることで、店舗の立地開発にも貢献しているようです。

 

また、2018年8月の大阪府北部地震や、9月の台風21号による被害で一日50しか売れなくなります。

 

中村氏自身が1店舗の撤退を決断した際も(結局は撤退せず)、傍らで旦那さんが支えていたようです。

 

人は孤独に弱いし、見守ってくれる存在も必要です。特に、新しく何かを始めようとするときは、理解者の存在が大きいということ。

 

起業するのであれば、家族を味方につける。

 

一人で道を切り開けるのであればよいですが、なかなか踏み切れないのが現実。背中を押してくれて、「何かあれば助けるよ」という存在がいることは、精神的にとても大きいような気がします。

 

巻末のカウンターパンチで目を覚まされます

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この本は、今の世の中で「これはアリだな」と思わせる画期的な働き方やビジネスモデル提示してくれる「物語」に満ちた本ですが、巻末にカウンターパンチが待っています。

 

「起業したい、行動を起こしたいと思っているが、動き出せていない」方々へは

やや強烈かもしれません。詳しくは、是非皆さん自身の手で読んでいただきたいです。

 

もし、自分が働くとしたら

 

佰食屋のクレドは、

 

※本文から引用※

「会社は明日の責任を。みんなは今日の責任を。」「会社はこれからの集客や広報に責任を持ち、お客さんにたくさん来ていただく努力をし、みんなを大切にします。」「みんなはお客様が限られた時間の中で最大限満足していただけるよう、接客・調理・おもてなしの努力をし、お客様を大切にします。」

 

責任を明確に分け、従業員は現場業務に集中し、責任を持つ事を課しています。

逆にいえば、「現場を超える発想」はいまのところ求められていません。

 

自分が佰食屋で働くことを想像してみます。

 

私自身が、「腹落ち感のある目標」や「成果への公正な評価」を求めるタイプなので、目指すものが明確な分、モチベーション高く毎日の業務はこなせるような気がします。

 

フードロス削減は、当たり前の取り組み

 

また、フードロス削減への貢献は、とっても共感。

 

コンビニの総菜(恵方巻など)の大量廃棄が一時期話題になりましたが、CSRとかSDGsとか言われるまでもなく、どんなに儲かっていようとも、まだ食べられる食材を利益のために平気で捨てる企業では働きたいとは思いません。

 

その企業が長続きするとも思えません。

 

「長期的なやりがい」はこれからわかる

 

そのうえで、「長期的なやりがい」については、まだ疑問を感じます。

 

「仕事を通じ自分の成長が感じられる」ことは社員の定着において重要なことなので、その点が課題になっていないのかは、キャリコンとして中村氏に聞いてみたいポイントです。

 

今後の佰食屋が、「やる気に溢れる人」を採用しないで、現在のビジネスモデルのまま継続してゆくのか、はたまた、形を変えながら拡大してゆくのか。

 

これからが興味深いところです。この辺は中村氏も迷う時があると、正直に吐露しています。

 

飲食業界というレッドオーシャンへの挑戦

 

全体を通して書かれている、拡大主義、利益至上主義へのアンチテーゼを、「飲食」という超ド級レッドオーシャンの世界で体現しているのはすごいですし、応援したくなります。

 

埼玉在住の身からすると、京都へ足を運ぶのは難儀ではりますが、是非一度お店の雰囲気を体験してみたいです。

 

今、日々の仕事に悶々としている方には勇気と元気を与えてくれる本です。是非購入して、今後の佰食屋を応援しましょう。

 

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